森も水晶もイヤホンもBluetoothできたよな?

ゼンハイザーのワイヤレスイヤホン。イヤホンのケーブルがやたらと断線するので、この機会にワイヤレスに、と思って買ってみた。

紙の箱を開けた瞬間にかすかに漂ってくる金属の匂いと、ドイツのプロダクトらしい無駄のない頑強なデザイン、そしてペアリング中に点滅する青みがかった光。

耳に添えるだけのワイヤレスイヤホンは、もっと弱いのだと思っていた。ちょっとした歩幅の乱れであっという間に剥がれてコンクリートの上を無様に転がり落ちていくイヤホンを想像していたし、有線のを適当に丸めてポケットへ突っ込んでおくことにどこか風情を感じていたし、マイクが伸びているタイプなんかも〈あれなんの管かな?ビタミンDとかを耳から注ぎ込むのだろうか?〉と思っていたのは正直に言っておくけど、ゼンハイザーの妖しいにぶい艶をこもらすケースには物としての「強度」を感じた。本体をケースに戻した時にガシィィィ!と力強く噛み合う音が響いたときおれはこれが毎日の装備品のひとつになることを確信した。

あと、手ぶらで聴けるのがこんなに良いものだとは思わなかった。たとえば出先で、リュックのポケットからさっとゼンハイザーを取り出して片耳に装着してすぐにフランス語のリスニングなんかを始められるのもいいし、自宅で掃除する時はグルーヴにガンガン身体を揺らして、両手で旋回運動をしてみたり、床に崩れ落ちてみたりと、そのままの勢いで洗濯や洗い物のタスクを身軽に次々と打ちあてて行くことができるのだ。

そして充電の問題。一度出かけるたびにフル充電が必要なのだと思っていたのだが、ケースを含めてバッテリーの容量が予想よりも遥かに大きく、せいぜい一週間にいちど充電しておけば気兼ねなく使える。充電の問題は透明となって、ただ路上の石のように、自然のエレメントとしてずっしりとそこにある感じだ。

音も最初はうすいのかな?遠いのかな?と思っていた。しかしこれは余分なコンプレッションがかかってないためにそう聴こえるだけだった。音質としてはこれまで使ってたイヤホンより良さそうだ。

今日もリュックへ石を詰める気持ちでゼンハイザーを一番上のポケットへ忍ばせて出かけます。