シルキーラテに蘇生するおれ

Largeサイズの紙カップには、店のロゴと合わせて、まぶしい緑の芝生の上へ寝そべっている数匹のアニマル(希望にあふれる変な鳥、あめ色のライオン、硬そうな象)が描かれている。

おれは紙カップを右手でにぎって、飲み口を作るために軽くたわませて、舌を火傷しそうなほど熱いラテを、グッ、と流し込むのが何より好きだ。

褐色のコーヒー豆の優しいコク。ほのかな甘み。そして、鼻の辺りを通過して、正午の青い空へススィィィィィィ、ススィィィィィィと抜けていく瞬間に広がる香ばしさ。それらがラテの表面に浮かんだ細やかな泡と混ざって無数のテクスチャーを生み出すのだが、不思議なのは毎日変わる泡の具合。

気温や天候の影響なのか、それかバリスタさんの腕前だろうか?バリスタ…?おれが毎日通っているこの、ぱっとしない丘の上の銀杏の木の下にあるカフェには腕の良いバリスタさんが5人もいる。

バリスタさんがにぶい鋼の光をたたえたMade In Italy No Doinaka No Yabai Factoryのエスプレッソマシンを駆使して、絶妙な加減で空気の粒を含ませながら圧縮、急速に加熱したミルクはすごくなめらかでシルキー、解像度の高いハイファイな味わいだ。

一杯のラテがランチタイムのおれを蘇生する。最近入った中年の男性バイトが不器用に、どしゃどしゃと投げやりに沸騰させたラテは現場の砂利みたいになっている、が、これはこれでなんだかやさぐれた気分を煽られて結局ランチタイムのおれを蘇生する。

店を出て、空を見上げると雲が見えた。胸一杯に丘の空気を吸い込むとまぶたにひんやりとさわやかだ。さて、午後のミーティングも頑張るゾォォォ(*・∀・)

帰りたい。このままメトロで帰宅したい。帰ってシルキーな布団に横たわって、ずっと派手な色の菓子をむさぼり食っていたい。

でも今日は木曜日。あと一日やり過ごせばまぶしいバカ豚麺がおれを待っている。だから午後のミーティングも頑張るゾォォォ(*・∀・)!!

店の方を振り返ると、バリスタさんが操るエスプレッソマシンが明るい灰色の蒸気をものすごい勢いで吹きあがらせていた。