ヴァストサン/午後の広場のおれ

先週末の午後。おれは駅前のロータリーのベンチに座り込み、うつろな目をして景色を眺めていた。

相変わらず荒い作りの広場だ。コンクリートの下に根を張った無数の樹木が、ところどころで盛り上がってしまっている。

目線の先にあるフェンス越しに広がっていたのは、電車の車両がいくつもなめらかに連なった、広大な車庫だった。やはりそうだった。電車から一瞬見えた空間。鋼の線のようなものが積み上がってこんもりとした山を取り囲むように林立した橙色のクレーンが旋回運動をして、そののんびりとした色彩の流れにおれは不思議な安堵を覚えたのだった。

喉が渇いていた。マクドナルドで買ってきたカップの蓋を開けるとみずみずしい色をしたジンジャーエールで満たされていた。

カップの冷たさは例えようもなく良かった。街路樹から漂ってくる緑の匂も日の光も、足を組んで革靴を左右に揺らすと感じる重みや遠心力も心地よかった。

ジンジャーエールを一気に流し込むとカップに敷き詰められた無数の氷が残ったので、そのまま頬張ってザリザリと噛み砕いた。

路上に影が落ちていた。そしてその影を目で追っていった先に車庫が広がっていた。車庫には午後の平穏が満ちていた。

鋼のコンテナ。レール。無骨な直線を組み合わせた構造物がいくつも並んでいる。それらは昼の光の下でくっきりと輪郭を表し、事物それ自体の姿で静かに憩っているように見えた。

ーーあの大きな塔は見たことがあるなーー

おれはブラックジーンズの裾についた埃を軽く払うと、車庫へと続く道をよろよろと歩いて行った。