手近なハードコア

駅前広場の牛丼チェーン。

黄色に青と白のロゴが掲げられた入り口のドアが開くと、高出力の蛍光灯で隅々まで照らされた、殺伐とした店内。その様子はさながら食品工業で、「加工の過程でタレを絡めて牛丼営業もしていますよ」といったような、それか「言ってもらえれば提供するんで笑」といった具合。

店員のただずまいが何より気に入っていて、パリッとした味気ないユニフォームを着て極力アイデンティティを出さないように出さないようにとちょうどいい無気力さへチューニングした様子におれはHardcoreを感じる。

20種類もの丼メニューを映しだす液晶パネルのきらめき。

やっぱり牛丼のご飯は硬めに荒く炊かれているところがいい、不揃いなところに甘いタレが染み込むのだから。工場で4トンの巨大鍋で日々煮込まれているタレは牛肉とタマネギから染み出す旨味と絡んで、ザクザクとかきこんでいくところに牛丼の醍醐味がある、とおれは思っている。

白米も具材も、すごく雑に盛り付けてあるようで配合に規律が感じられ、そんな所にチェーン店としての伝統が見え隠れする。

おれはうっとおしい前髪を何度も払いのけながら一気にプレミアム牛丼(特盛)をむさぼりくった。丼に顔を埋めそうになって椅子の前方に体重を乗せると、どうもミシミシいうので不安だ、しかしこれも含めて、バイトの長田君の一切の抑揚を欠いた「ぎゅうどんはいりますぅぅぅ」コールも含めて、この店にはたしかに本物のHardcoreが流れている。