間の街

オフィスからの帰り道、乗換駅の改札を出てすぐのところに、大手チェーンの輸入食品屋ができた。

菓子やチーズ、チェコの珍しいドレッシングなど、真新しいものがたくさんあるので、つい立ち寄ってしまう。

なんだか仕事後の変に渇いたスーツを腕組みして店内をノンノン歩いて品々を見ているだけで楽しい気持ちになってしまう。どの商品からも世界中のーここではないどこかーの景色が浮かんでくるからなあ。おれもどこかの丘の上のドレッシング工場で鼻歌を口ずさみながら一日3時間の牧歌的労働を行いたいものだ。

特筆すべきはビールコーナーでスチール棚にずらっと並ぶのは、DUNK IPA、Mind Haze 、Sierra Nevada Tropicなど。新鮮なラインナップにいちどに世界が開ける感じがする。いつもの煤けた帰り道に突然現れること。生活の動線上にある事にカタルシスがあると思う。

ふつうのドラフトビールや発泡酒や、背伸びしたうっすい香りのを啜っているのも好きなんだけどな笑おれの街ではスーパーや駅ビルのどこを探しても山でいうと3合目までのラインナップが広がっている。そしてどの「ほどほど」のラインナップも、その先にあるまぶしい余白を予感させる。

じゃあ、Mind Hazeを備えたここは中くらいの街、ということになるのか。で、もう30分足を伸ばして大きな街まで行くとMikkeler Ultla HazyやMirror Universeなんかのレア物が並んでいる。たとえば「綺麗な虹をそのまま生絞りしました」といった具合の、まぶしい小麦汁が手に入る。

今日は64円の発泡酒を飲む。するどいアルコールの匂いにわずかな小麦の風味。明日はきっとSierra Nevadaを一気飲みしよう。それで月末には虹のMirror Universeを一気飲みしよう。このグラデーションだ。