おれのアルティメットバーガー

毎日食うことにすがりついて生きている。ふやけたウイダーでも牛蒡チップスでも、あとセブンのツナ握り。林檎。薄いバニラ味のプロテイン。それらすべては毎回新たな香りや味をあらわす、つまり、365日すべての食事がおれにとっての祝祭なのだが、これまで「究極」と呼べる食事があった。

大学の帰り道、駅のホームでむさぼり食ったチーズバーガーである。おれの大学はけっこうな田舎にあったから、毎日常磐線に1時間半くらい揺られて、駅のロータリーから車体に錆がこびりついたクリーム色と青の無礼な運転手が乗り回している〈門鉄交通〉バスでペンペンの野草なんかが能天気に茂っている田舎道を、同じく大学へ通学、通勤する学生、教員なんかが都心の満員電車よりもひどいすし詰め状態になって片道40分の道のりを往復するのだ。

どんよりと淀んだ空模様の冬の或る日。6限の美学演習IIを終えたおれは、すでに一日の疲労と田舎の侘しい空気に浸され、煤と汗の匂いが立ち込める門鉄バスの車内で、液晶が薄緑に光るMP3プレイヤーで音楽を聴きながら、薄汚れたガラスから見える田舎の景色へ虚ろな目を漂わせていた。

ーーおれは明日もここへ来る。明後日もだ。こんな毎日がひっきりなしに数限りなく何ももたらさずに続いていくーー

駅のロータリーに降り立ったとき、おれは一日を終えて、これでひとまず休めることの侘しい充足とともに、朝にジャムパンを一切れ食べてからなにも食べていないことに気づいた。

それは強烈な空腹だった。おれは早足でふがふが間抜けに動くエスカレーターをうぁぁぁぁぁぁ、しゃぁぁぁぁぁぁなどと声を漏らしながら勇ましく上っていった。

申し訳程度のショッピングエリアが設けられた駅だ。2階の中央で煌々と明かりを放っているのがマクドナルドだ。

「チーズバーガーでお願いします」

チーズバーガーを手に取ると、すぐさま常磐線のホームに降りて夢中でむさぼり食った。バスラッシュにひしがれた身体の奥までサーっと染み入る強靭な旨味、ぐったりしたピクルスからは爽やかな酸味があふれてくる。手が震えていた。

そんであああこれなんだよなあこの力一杯床に叩きつけたようなバンズの感じ!!紙が綺麗に歪んだパッケージに連なった記号の羅列が目にしみた。

さも帰り道にほっと一息(笑)のような、わびしい充足では終わらなかった。

たとえば吹き抜ける風?頼りない希望でもなく翌日にすり潰される意志でもなく癒しでもない、不毛で不可解な毎日ごとふっとばす一陣の!?とにかくあれは、突然差し込まれた祝福のような食事だった。